Skip to content(本文へジャンプ)

事例紹介宇和島市様ガバメントクラウド先行事業Cases

宇和島市様ガバメントクラウド先行事業

小島佑貴氏

宇和島市 企画政策部 デジタル推進課 デジタル推進係
主任 小島 佑貴

標準化のリフト・シフトが目の前に迫るなか、自治体様からは「全貌が見えづらく不安」という声が上がる、ガバメントクラウド。ここでは、当社がアプリケーション開発事業者として参画している「ガバメントクラウド先行事業」において、愛媛県宇和島市様と当社の取り組みを、インタビューを通して紹介します。

標準化対象業務を含む、
全55業務の「ガバメントクラウド」リフト

愛媛県西南部(南予地方)に位置し、468.19㎢の面積に総人口67,898人(2024年4月現在) を擁する宇和島市 。同市は、2021年10月、デジタル庁の「ガバメントクラウド先行事業」に採択され、2023年2月27日、標準化対象である基幹業務18システムに加え、財務会計や人事給与システムを含む全55業務システムを「ガバメントクラウド」上で運用開始しました。

宇和島市はRKKCSの「総合行政システム」を2005年の合併以来導入しており、そこで利用中の55業務をすべて移行する方式は、ガバメントクラウド先行事業の応募52件・採択8件のうち、最多の業務システム数となります。

小島 佑貴

―――55業務での応募申請となった背景を教えてください

小島氏:

そもそもガバメントクラウドの主目的はコスト削減。全55業務をリフトしなければ、費用対効果は出せないからです。

というのも、標準化対象のみなど一部の業務だけガバメントクラウドへ移行する方式では、既存のデータセンター利用料、ハードウェア、ミドルウェア、回線費用等が重複したり、共通基盤・共通データの二重管理になったりと、かえって無駄が生じてしまいます。

その点、宇和島市のサービス利用形態は、データセンターを利用したASPサービス型ですから、「部分」ではなく、「全体」をガバメントクラウドへ移行する方式が、理にかなっていると言えます。

―――応募申請にあたり有用だったRKKCSのシステムやサポートを教えてください

小島氏:

「総合行政システム」は、20年弱という長期にわたって、大きなトラブルが起きることもなく、UIも使い勝手が良く、満足度高く運用していました。そのオールインワンだからこそのデータ連携の良さは特に維持しておきたいポイントだったのです。

また、私たちにガバメントクラウド・標準化に関する知識がない中、RKKCSは、技術面およびコスト効果の検証から始め、今後の標準化対象の拡大を見据えた構成管理、リフト後の効率的で将来を見据えた運用やサポートにいたるまでを整理・整頓してくれて、現実的な計画に落とし込む作業をリードしてくれました。そんな過程を経て、55業務一括移行での応募申請に踏み切るにいたりました。

「ガバメントクラウド」移行に係る影響と
投資対効果面での課題

―――移行・稼働後の状況について教えてください

小島氏:

一言で言えば、「生活スタイルの変わらない引越」。もちろん稼働後の障害もなく、良い意味で使い勝手の変化もないため、職員には「何か変わったの?」と言われるくらい混乱はありません。リソース最適化の恩恵か、「バッチ処理が早くなった」という声も届いています。

小島 佑貴

このように「総合行政システム」の特性を活かした移行により、実務面での課題はほとんど見受けられなかった一方で、2023年12月にデジタル庁から発表された「ガバメントクラウド先行事業(基幹業務システム)における投資対効果の検証結果【追加報告】」の通り、「ガバメントクラウドへのリフトにおいて通信回線の新規整備が必要なため約26%増加」という結果で、デジタル庁が期待する効果にはつながっていないことが明らかになりました。

―――コスト増の原因と、今後の見通しについて教えてください

小島氏:

三層分離に係わるセキュリティポリシーの見直しや、当初国で用意するはずだった回線の自前調達などに伴い、コストが当初計画より膨らんだのが大きかったです。

それでも将来的には、他団体との共同利用方式によるシステム運用作業費・クラウド利用経費の按分効果に加えて、RKKCSインフラチームによるさらなるクラウド最適化チューニングや、ネイティブアプリ化の推進などにより、私たちのケースであればプラスマイナスゼロまで削減できることを期待しています。

デジタル化、
そして地域DXを成功させるための基盤づくり

宇和島市のガバメントクラウド先行事業での取り組みは、注目を集め、小島氏のもとにはセミナー講演や視察、ヒアリングなどの依頼が相次ぎました。

―――先行事業への採択から稼働、現在にいたるまで、どんな反応がありましたか?

小島氏:

シティセールスの一つとしてPRの効果があったかもしれません。なお、他自治体から寄せられる質問としては、前述の投資対効果の実情以外には、「内部調整・現場コントロール」の関するものがほとんどです。

―――「内部調整・現場コントロール」を成功させる秘訣を教えてください

小島氏:

1つ目は、上層部に理解してもらうためには、合理的なメリットをしっかり提示すること。スケールメリットでコストは低減し、セキュリティも向上しますと訴え、先行事業に臨みました。実際、採択されて市長も喜んでくれました。2つ目は、現場には、メリットだけではなく、どんな変化があるのかを、正直に話すこと。私は業務改革に長く携わってきた経験から、係単位など少人数で集まってもらい、 直接対峙して粘り強く対話することを大事にしています。

宇和島市では、ガバメントクラウド先行事業に先立ち、2021年よりのシステム標準化と併走したBPRの取り組みや、2022年からの宇和島市DX推進計画など、現状と将来の課題を認識し、常に一手先に動いてきた経緯があります。そんな地方自治体のフロントランナーとして打ってきた布石が今回大きく結実したと言えます。

小島 佑貴

―――今後の展望と、そのうえでRKKCSに期待することを教えてください

小島氏:

本質的な話としては、ガバメントクラウドも標準化も、いつかは必ずやらなくてはならないこと。特に宇和島市は超高齢化・少子化自治体で、2040年問題への危機感を人一倍感じています。

私たち自身、ノンコア業務のデジタル化をはじめとした、行政サービスの効率化はもちろんですが、地域DXを推進していくうえで、民間からすれば「まずは、行政から見本を見せてほしい、ボトルネックにはならないでほしい」という思いが強いわけです。

その点で、今回の先行事業で背中を見せるかたちになった価値は大きいと思っています。これに満足することなく更なる行政DXを推進するため、電子決裁・電子契約など、次の種を蒔き続けようと思っています。

私は常々、基盤がしっかりしていなければ、デジタル化は表面的なもので終わってしまうと思っています。その点、その基幹システムを担ってくれているRKKCSは、営業部門と技術部門の横連携ができていて、「誰に話せば進むのか」なんて迷いもなく、ワンチームで課題解決にあたってくれる風通しの良いパートナーだと思っています。レスポンスの早さ、フットワークの軽さで、調整の手間を最小化してくれます。

実際、確実に職員の意識は変わりました。庁内で「職員も減っている中、業務が増えてさばききれなくなりつつある。技術を使いこなせる人材になって、デジタルの力を使いつつ効率化を図りたい」という声があがっており、今後もRKKCSからの支援は欠かせません。